現代の万年筆である自作キーボードを作る上で、市販アセンブリ製品の仕様を読み解いて、キーボードの構造を知る
「キーボードは、現代の万年筆である」
誰が言ったか、その言葉が頭に突き刺さってから、自作キーボード、もといカスタムキーボードにご執心。
万年筆が大好きな当ブログとしては、手を出さずにはいられない。
(DELTAのドルチェビータしか、万年筆の記事を書いていないけど。。。)
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今回は、初めて自作キーボードを始める人が、見るべき視点というのを、自作キーボードセットの仕様から読み解いてみましょうという記事です。
目次
FULLY ASSEMBLED D84 V2を読み解く
今回は、FULLY ASSEMBLED D84 V2という、アセンブリ品の自作キーボードの仕様をもとに、自分でキーボードを作る際に、どんなところにカスタム要素があるのか?というのを紐解いていこうと思います。
アセンブリ品とは、ベースのキーボードをもとに、一定の需要がある仕様を抜き取って組立てられている(もしくは、部品だけ送られて、自分で組立てる)キーボードです。
Fully Assembled D84 V2 Black Hot-swap RGB Mechanical Keyboard With ePB
– KBDfans® Mechanical Keyboards Store
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Fully assembled keyboard with epbt 9009 keycaps collection Tofu60 DZ64 RGB KBD8X Mark II WKL KBD8X Mark II TKL Specs: Structure: Gasket Mount Case: D84 V2 Black aluminum case Typing Angle: 7° Hot-swap version: KBD75RGB Hot-swap PCB (Per-key RGB on top) SKU: DP4025, Type-C interface, without RGB underglow. Fixed layout
自分で部品を選定して作るよりも、すでに実績のある部品を選定されている方が楽で、僕のような面倒くさがり屋さんにはちょうど良い。
ただ、せっかくの自作キーボードなのに、自分の好きなようにカスタムできないのは、なんのための自作なのか、というところでしょうか。
とはいえ、キーボードのケースを1から設計している猛者はごく少数だと思います。
基本的に自作キーボードは、パソコンのBTOみたいなものと考えるとわかりやすいです。
ベースとなるのは、PCB(基板)か、ケースで、現存するどちらかの仕様に合わせて、他を埋めていく作業が、基本的なやることです。
ということで、今回は、D84というケースと基板のキーボードセットをベースに考えるてみましょう。
D84の仕様一覧
D84の仕様のスクショを上記に貼っておきます。テキストだけ抜き出したものは後述。
D84は、KBDFANSという中国のキーボードショップで売っている自作キーボードセットです。
自作キーボードの怖いところが、海外製が多いというところ。急に英語とかが出てくると、恐怖心に慄いて、何もやる気が起きなくなる。
日本では、遊舎工房というところが、実店舗を秋葉原に構えていて、とても気楽に入れて好きです。
ということで、まずはD84の下記仕様について、何を言っているか、ということと、その仕様でどんな種類が他にあるのか?ということをメモ程度に書いていこうと思います。
どんな種類があるかわかれば、後で検索で調べられますからね。
ということで、下記の仕様について、個別に説明していきます。
- Layout: US
- PCB Size: 75%
- Structure: Gasket Mount
- Case: D84 V2 Black aluminum case
- Typing Angle: 7°
- Hot-swap version: KBD75RGB Hot-swap PCB (Per-key RGB on top) SKU: DP4025, Type-C interface, without RGB underglow. Fixed layout (84 keys), one layout ONLY for hot-swap PCB.
- Switch: Gateron Black(選択式)
- Switch Lube: No, thanks!(選択式)
- Plate: Polycarbonate Plate
- Stabilizers: Cherry screw-in stabs 60set
- Keycaps: EnjoyPBT 9009 Keycaps Set (SKU: C0015)
- PCB foam: Put it between PCB and Plate DP1393
- Case foam: Put it between PCB and Case DP0501
- Weight bar: Aluminum material
Keyboard Layout(キーボード配列)
まず、大前提として、自作キーボードは、ほぼほぼUS配列でのキーボード配列しかありません。
日本のパソコンでよくある配列は、JIS配列という配列。言わば、日本用の配列です。
自作キーボードは、海外での勢い強く、GB(グループバイ)での集客性を高めるために、US配列という英字用のキーボード配列が主流なのです。
上記にUS配列のスクショを貼ってる通り、若干、レイアウトがJIS配列と異なっています。「ENTERキー」とかは、形も違いますね。
僕は、MacでずっとUS配列を使っていたので、特に違和感はないのですが、初めて使うと、なんじゃこれは、と思うかもしれません。
実際のところ、アルファベットの文字配列はJIS配列と同じなので、通常の文字を打つ上では、あまり影響はないかと思います。
USもJISどっちが優れているかなんてことはなく、ただ単にJISとANSIという参照の規格が違うだけです。
使う人にとっては、趣味嗜好と、あとは慣れです。
Structure(構造)
Structureは、プレート、もしくはPCB(スイッチがくっついている板)を固定する構造のことです。
D84は、Gasket Mount(ガスケットマウント)という構造をしています。
他には、下記のようなマウント方法が存在します。
- トップマウント
- トレイマウント
- サンドウィッチマウント
- 直結型プレート
- ミッドマウント
- PCBマウント
プレートマウント方法とスイッチとの相性情報 - Self-Made Keyboards in Japan
最近の流行りは、ガスケットマウントみたいです。
ガスケット(ゴム)で、プレートを挟み込んで固定します。
キーの反射音をどうやって抑えるかが、良いキータイプ音を出すかの要みたいなので、ガスケットでシールして封止して、かつプレートの振動を吸収するのは、妥当な構造な気がします。
トップマウントにガスケット挟むのが一番安上がりで、かつ、音も良さそうだけど、どうなんだろう。
PCB Size(PCBのサイズ)
PCB(=キースイッチを取り付ける基板)のサイズにも、何種類か存在します。テンキーありのフルキーボードを100%ととして、75%だったり、40%だったりと数字が決まってきます。
さらに、このサイズによって、ケースの大きさが決まったり、必要となるキーキャップの種類が変わってきます。
代表的なものとしては、下記の種類が存在します。
- 100%:テンキーあり、Fnありのフルキーボード
- 80%:テンキーなし、Fnあり
- 75%:テンキーなし、Fnあり、Homeなどが縦一列になっている
- 65%:テンキーなし、Fnなし、Homeなどが縦一列になっている
- 60%:テンキーなし、Fnなし、Homeなど無し
- 40%:謎(人によりけり)
- 30%:謎(達人)
個人的には、テンキーはいらないけれど、Fnはあってほしい。けれども、マウスに当たるのが嫌なので、75%のキーボードを愛用しています。
ただ、自作キーボードの主流は、60%or65%のようなので、75%はレアです。
低価格75%US配列メカニカルキーボードの決定版!e元素 赤軸81 メカニカルキーボード | GarretCafe
テレワークで、自宅で仕事をするようになると、身の回りのものを好きなもので固めたくなる。 会社にいた時は、周りの目を気にして、少し遠慮していたようなものまで、自分好みできたりするからだ。 そんなアイテム ...
スイッチの個数も余分に必要になるので、60%の方がコスパ良く遊べます。
CASE(ケース)
ケースの種類です。キーボードの部品、PCB、キーキャップ、スイッチ、プレートなどを、収容する筐体です。
D84は、D84用に作られた、aluminum(アルミ)材料のケースを使っています。
一般的に使われていそうな材料は下記です。
- アルミ
- PBT(樹脂)
- SS(ステンレス)?
- 真鍮?
大体の自作キーボード用のケースは、アルミかPBTな気がします。アルミは材料費が安く、切削加工がしやすいので、安く作れる(と言っても、樹脂とかよりはかなり高い)ので、よく用いられているのでしょう。
削って作るなら、開削黄銅とかも安く作れそうな気がしますが、あまり見ないですね。表面処理が高いんですかね。よくわかりません。
PBTは樹脂の中では硬く、質感も良いため、アルミを使うとコスト未達になる場合と、中のLEDライトを透過させたい場合などに用いられる感じでしょうか。
また、ケースの種類によって、先程のマウント方法が決まります。
Hot-swap version(ホットスワップ)
後述のキースイッチをはんだ付けなしでPCBに着脱できるモデルがHot-swapと呼ばれています。
(Hot-Swapは活線挿抜のことを指す単語のような気がするので、キーボード用語?)
ホットスワップができない基板は、スイッチを自分でPCBにはんだ付けする必要があるので、時間がかかります。
面倒臭い。
ただその分、はんだ付けをすると、PCBのレイアウトに自由が効く場合が多いらしい。極めると、ここにたどり着くんであろう。きっと。
ちなみに、非ホットスワップモデルも、ホットスワップ化できるアダプタ的なのが存在しているらしい。
よく知らんけど。
Switch(スイッチ)
みんな大好きスイッチ。
メカニカルキーボードで一番最初にたどり着く単語が、「軸」であった人は多いのではないのでしょうか。その名の通り、キータイプを検知するスイッチです。
メカニカルキーボードは、このスイッチによって、キータイプの感覚を変えられるのがとても面白いところ。
(言い忘れていましたが、自作キーボードは、ほとんどがメカニカルキーボードです。
他には、メンブレン、パンタグラフ、シザーなどあります)
で、その軸の種類ですが、腐るほどあるので、いろいろな視点からスイッチを分けておきます。
軸の色
よく書かれる軸の色です。
一般的には、下記の色が存在します。メーカーによって、若干スイッチの仕様が異なっているので、ある程度の傾向として見ておくのが良いのでは、と思います。
基本的には、CherryMx軸のことを指すのが多いのかも。
青軸:クリッキー
赤軸:リニア
茶軸:タクタイル
黒軸:リニア(赤より重め)
ピンク軸:リニア(赤より静音)
打鍵感
上記で出てきましたが、大きく分けると、下記の3つにわかれます。
- リニア軸:引っかかりがない打鍵感。スコスコ
- タクタイル軸:押した時に、引っかかりがあり、押した感が存在するスイッチ。コリコリ
- クリッキー:タクタイルにバチバチとした音が鳴るようになったスイッチです。カチカチとかバチバチ
こんな感じの、スイッチテスターが巷に売っていますので、おために買ってみると、どんな感じのスイッチが世の中に存在するかわかって楽しいです。
メーカー
最初に自作キーボードを触り始めると、まず出てくるのは、Cherry MXスイッチですが、いろいろ調べていくと、もっといろいろなメーカーからスイッチが出ていることに気がつく。
最初のメカニカルスイッチの特許をCherryが持っていて、それを使ってCherry MXを作っていましたが、特許の期限が切れて、いろいろなメーカーが格安だったり、高機能なスイッチを作り始めています。
よく出てくるメーカーを置いておきます。
- Cherry
- Kailh
- Gateron
- Durock(JWK)
- Outemu
Switch Lube(ルブ)
ルブは、スイッチにつける潤滑剤です。
潤滑剤なので、打鍵感と、打鍵音が変わります。結構変わるポイントらしいですが、面倒臭そうで、まだやったことありません。
スイッチの系統によって、推奨される潤滑剤が違うみたいです。
- リニア:Krytox GPL 205 GRADE 0
- タクタイル:Tribosys 3203
- スプリング:Krytox GPL 105
いつか、時間ができたら、どれくらい変わるのかやってみたいものですね。
KBDFansでは、有料でルブしてくれるサービスがあります。
最初のスクショでは、No Thanks!にしています。
Plate(プレート)
PCBとスイッチを固定する板です。
D84では、Polycarbonate Plateを採用しています。
PCを含めて、下記の材料などがあります。
買い比べしていないので、打鍵感に対する違いは、よくわかっていません。
- PC(ポリカーボネート)
- アルミ
- 真鍮
- SS(ステンレス)
- FR4(PCBの素材)
ヤング率の高い順に並べると、
SS>真鍮>アルミ>>>FR4>PC
です。
下2つは、樹脂なので、ヤング率では金属とは雲泥の差です。また、価格も雲泥の差です。
ヤング率が高い方が、打鍵した時に硬さを感じそうです。その分、音も高くなるのかな。
PCなんかは、剛性が低いので、指に優しそうですね。
Stabilizers(スタビライザー)
スペースとか、エンターとか、デカめのスイッチの打鍵を安定させるために使う部品。
安定させるために使うのと共に、音にもかなり大きく関わってくるとか。
ここら辺も、こだわったことないので、よくわかりません。
というか、思ったよりも長文になって疲れてきた。。。
Keycaps(キーキャップ)
実際に、指で触る部分が、キーキャップ。
キーボードの目に見える部分の大多数を占めるのと、普段触る部分なので、かなり重要な立ち位置。
材料としては、PBTとABSの2つ。PBTの方が、硬めなので、しっかりとした打鍵音になる。
二色成型は、一度キーキャップの形に成型した上で、文字の場所に二色目の樹脂を流し込む製法。手間がかかるので高いけど、文字が消えないし、見た目もおしゃれ。
foam(吸音材)
ケースの隙間とかに埋める吸音材。
隙間が空洞だと、反響して変な音になるので、それを吸収するための部品。
あると結構変わるような気がするので、大事と思う。
Weight bar(重り)
重り。
ケースにしっかりくっついていれば、ケース自体が振動しづらくなり、共振周波数などが変わる。
高周波側に全体的に移動すると思うので、音が高くなって、かつ減衰が速くなると思う。
まとめ
ということで、キーボードの仕様を読み解いてみようの回でした。
長文になってしまって、後半、かなり雑になってしまいました。そのうち、加筆修正して、綺麗に体裁を整えたいものです。
よくわからん部分も多いので、要調査ですね。
では。