小説にも登場し、一世を風靡するも、メーカーが廃業して消え去った万年筆、DELTAのドルチェビータ
2022/02/17
一時、万年筆にハマっていた。
最初は、僕の万年筆との出会いの話から。
目次
万年筆との出会いは小学生
最初に万年筆を手にしたのは、小学生の時でした。
「8年誌」という毎日日記がありまして、それを毎日ちゃんと書くという命題を、両親からもらっていました。
そのとき、8年誌用の筆記具として万年筆が渡され、それが万年筆との初対面。
そのときには、万年筆にはハマらなかった(ハマっていれば、もっと違う人生だったかもしれない)
小学生だったので、もらったのはLAMYのサファリという割と安めの万年筆でして、子供ながらに、もうちょっとしっかりしたの買ってくれても良いのに... と思い、テンションが上がらなかったことを今でも覚えている。
インクが手につくし、汚れるし、インク変えるの面倒くさいしで、あまり使わなかった。
当時、万年筆は、本当にただの面倒臭い筆記具でした。
大人になって驚いた、「ヌラヌラ」という書き味
時はだいぶ過ぎて、大人になったとき、誕生日に知人から万年筆をいただきました。
毎日つけている日記に、改めてその万年筆で書いてみると、子供のときに抱いた万年筆の感想とは一線を画す書き心地に驚いたものです。
万年筆界隈で言う、「ぬらぬら」だったり、「すらすら」という効果音とともに、文字がペン先からスラーっと生まれてきたのです。
毎日日記は、3行ほどしか書く場所がないのにも関わらず、別ページのなんでもないところに、特に意味のない字を書いたりと、文字を書く行為そのものがとても楽しかった。
LAMYのサファリとの1番の違いは、ペン先の材質の違いで、サファリはステンレス製で、もらった万年筆のペン先は金。
金はステンレスよりも柔らかいので、一般的に書き心地がかなり良いというところです。
やっぱり初めて万年筆を手にするなら、金ペン先が良いのかもしれない。
落ちていく、万年筆の沼
そこから万年筆の「沼」に落ちるのはかなり早く、2本、3本と万年筆を買い足していきました。さらにインクもペンに合わせて5個、10個と一気に増えていった。
万年筆を集めること自体も、とても楽しかったです。キラキラとした樹脂や、ツヤツヤした黒塗りの樹脂、さらには一本一本違う書き心地など、もう買って試さずにはいられない、本当に沼であった。
このブログでは、万年筆について、一度も買いたことがなかったと思います。
ふと、万年筆について、何か書こうかな〜と思い立ったときに、真っ先に白羽の矢が立ったのが、今回紹介する、DELTAのドルチェビータという万年筆でした。
万年筆を集めると言う行為には、終わりがなく、集め続けるには、途方もない時間とお金がかかると言うことを教えてくれた万年筆です。
昔の万年筆はプレミア化していて高価だし、最新の万年筆でも特別モデルが湯水のように出てくる。
コンプリートなんてそれはまた夢のまた夢。
DELTAのドルチェビータという万年筆の入手をもって、一旦、万年筆沼から目が覚めました。
DELTAのドルチェビータ
DELTAという万年筆メーカーが、イタリアにありました。いろいろなラインナップで万年筆を出していましたが、一番有名なのは、おそらくドルチェビータというシリーズ、
黒い尻部とキャップとは対照的に、胴部の鮮やかなオレンジが映えるかっこいいモデル。
ドルチェビータとは、イタリア語で、「甘い生活」という意味だそうです。南イタリアの太陽の光を浴びた、鮮やかなオレンジをイメージしたオレンジ色というワードも洒落ていて、存在を知ったときに、超絶欲しくなりました。
雫井脩介さんの『クローズド・ノート』という小説にも、ドルチェビータ(ミニ?)が出てきています。読んだのはだいぶ前なので、内容の記憶はほぼないですが、若干ミーハー感ある僕は、それはもう欲しくて欲しくてたまらなくなりました。
ただ、万年筆、結構高いので、まずはお金を貯める。
で、いつかは買おう。そう心に決めました。
DELTA、廃業
そう心に決めてから、数年が立った頃、風邪の噂で聞こえてきた情報がありました。それが、DELTAが休業するという情報。
資金繰りが厳しくなったのか、製造停止を発表しました。
その一年後?くらいだったか、ついに廃業の情報までが流れてきました。
廃業というと、もう新しい万年筆は作られないということ。現在流通している万年筆が売れきったら、もう手に入らないということ。
自分がお金が貯まるまでいつまでも待ってくれていると思っていたのに、なんだか知らぬ間にそれが手に入らなくなる喪失感は、万年筆を収集するというモチベーションをゲンナリさせるのに十分なものでした。
中古品を探して、手に入れたドルチェビータ
とはいえ、欲しいものは欲しかったので、お金が溜まったタイミングで、中古品探しを始めました。
廃業したといっても、ドルチェビータのオレンジは、スタンダードモデルなので、中古の弾数もそれなりにあり、探すのは難しくなかったです。
それで手に入れたのが、最初からずっと写真を載っけている、オレンジのドルチェビータ。
綺麗なオレンジでできた極太の軸は、ザ・万年筆という感じで、とても好きです。
惜しむべからくは、吸入方式がコンバーター式というところ。スタンダードモデルのドルチェビータが、回転吸入方式だったら、天下をとっていたかもしれない。
別モデルで回転吸入が、あったようななかったような記憶もありますが、今となってはもう見つからんでしょう。
DELTAの意思は引き継がれて
via MomentoZero Collection日本限定モデル -トラモント- | LEONARDO OFFICINA ITALIANA-レオナルド オフィチーナ イタリアーナ
さて、DELTAは廃業してなくなってしまいましたが、実はDELTA創立メンバーが新たにブランドを立ち上げ、ドルチェビータに似た万年筆を作っています。
それが下記の2つ。
- LEONARDO OFFICINA ITALIANA(レオナルド オフィチーナ イタリアーナ)のモーメント・ゼロ トラモントCT
- Maiora(マイオーラ)が作る、Mitho(ミト)
両者とも調べてみればわかりますが、ドルチェビータにそっくり。公式サイトでも、DELTAの伝統を引き継ぐと書いてあるので、まぁそうなんでしょう。
レオナルドなんかは、回転吸入式ではないものの、尻軸を外して中のコンバーターを直接回せる方式等を取り入れており、ドルチェビータの後一歩足りなかった部分を改善していたりします。
そういった面では、下手にドルチェビータの中古を買うよりも、使用した時の満足感なんかはよっぽど上かもしれません。
近年は、デジタル化の波に押されて、万年筆も厳しい状況かと思いますが、一度メーカーが潰れても、そのルーツを持った新しいブランドが出てきて、雰囲気を継いで行くのはとても良い状況なのかな。
ということで
レオナルドか、マイオーラの万年筆が欲しい。
今回は、そういう落ち。
たまーに万年筆欲しい物欲が湧き上がってくる。最近はカメラレンズ買いたいから我慢するけどね。